こんにちはブログ担当のYです
今回も数学のパラドックスの話を紹介します。
今回は期待値に関するパラドックスです。
サンクトペテルブルクのパラドックス
偏りがなく表と裏の出る確率が同じコインを裏が出るまで投げ続けます。
裏が何回目で出たかで賞金が決まり、1回目なら1円、2回目なら2円、3回目なら4円、4回目なら8円……
というふうに賞金が倍々になるゲームがあるとします。
このゲームの参加費がいくらならあなたは参加したいと思いますか?
基本的には参加費より貰える賞金の期待値が高ければ得だと思うので、期待値を計算してみましょう。
期待値とは全ての起こりうる場合の(それが起こる確率)×(それが起こった場合の賞金)を足し合わせたものです。
例えば20%の確率で100円、30%の確率で200円、残りの50%の確率で0円が貰えるゲームがあったとすると
0.2 × 100 + 0.3 × 200 + 0.5 × 0 = 20 + 60 + 0 = 80
上記のように計算して期待値は80円となります。
問題のゲームの期待値を計算すると
1/2 × 1 + 1/4 × 2 + 1/8 × 4 + 1/16 × 8 … = 1/2 + 1/2 + 1/2 + 1/2 + … = ∞
したがって期待値は無限大となり参加費が10000円でも100万円でも1億円でも参加した方が良いことになります。
しかしあなたはこのゲームの参加費が100万円だったら参加したいと思うでしょうか、思わないですよね。
なぜこのような結果になってしまったのでしょうか。
無限の試行回数
このゲームは表が出続ける限り無限に続くものとして考えられていますが、これを「1000回まで」というように回数制限をつけたらどうなるでしょうか。
同じように期待値を計算していくと
1/2 × 1 + 1/4 × 2 + 1/8 × 4 + … + 1/2^999 × 2^1000 (2^999→2の999乗) = 1/2 + 1/2 + 1/2 + … + 1/2 = 500
おや?最初は無限大になりましたが、1000回という回数制限をつけたところ期待値が500円にまで落ちました。
このゲームの期待値は(可能な試行回数)÷2で求められるようです。
1000回表が出続けることは普通では考えられませんよね。
そのような低すぎる確率に高すぎる賞金をかけることで期待値が積み重なってこのパラドックスは生まれています。
胴元に賞金をいくらまで出せるのか聞いてみることで、このゲームの参加費を求める事ができます。
例えば「100万円までなら出せるよ」という場合の理想的参加費を計算してみましょう。
賞金が100万円を超えるのは連続で表が20回連続で出た時。
つまり可能な試行回数は20回ということになるので期待値は10円。
したがって、賞金の上限が100万円なら参加費は胴元の取り分を考えても20円くらいが妥当ということになります。
賞金の上限と期待値を表にまとめると次のようになります。
賞金上限 | 期待値 |
---|---|
1万円 | 6.6円 |
10万円 | 8.3円 |
100万円 | 10円 |
1000万円 | 11.5円 |
1億円 | 13.3円 |
10億円 | 15円 |
まとめ
無限大の期待値は無限の試行回数と無限の賞金額によって生まれている。
賞金額や試行回数を設定すると現実的な期待値が見えてくる。